喜劇だらけ

第27回公演「喜劇だらけ」作品紹介

 

 

<演出家 ペーター・ゲスナーのメッセージ

 

どんなときに、私たちは喜劇を求めるのだろう。

職につけず、不安いっぱいのとき。安全で安定した生活に、憧れているとき。

自分を、大きく、良く見せようと、嘘をつくるとき。

自分の力ではどうにもならない運命に対して、なんとかがんばるとき。

せめて文化的な最低限度の生活をしていると自分に言い聞かせたいとき。

ネストロイ作品には、文明への皮肉や、人間本来の価値・ルーツの価値が見失われた状況が登場する。

しかしこれは喜劇である。

私たちは、観客に、明るいパワーを返したい。

画一的な生き方を人間に強要する、コンピューター時代の仮面をはぎとるために

【公演紹介】

オーストリアを代表する伝統的なコメディの鬼才、ヨハン・ネストロイ晩年の作品から、
「昔の関係」 「酋長”夜風”」
の2作品を取り上げ、幕を挟んで上演します。
脚本は、日本におけるオーストリア民衆演劇の権威が結集した、「ウィーン民衆劇研究会」の翻訳台本を基に、うずめ劇場が独自のアレンジを加え、現代日本の観客により届きやすい内容となっています。
あまりにも生々しく現代の日本に通じるネストロイの喜劇世界。
オーストリアでは定番とも言うべきこの世界観を、時代と空間を超越して、在日ドイツ人演出家ペーター・ゲスナーが舞台化。
そして、文明の恩恵に満たされたこの世界で失われつつある「昔の(本来の)」「(人間同士の)関係」を呼び覚ますべく、人々の心を刺激的にノックします。
幕間、休憩時間にはワイン、ソフトドリンク等のサービスを行い、観客には舌でも公演を「味わって」いただきます。
また、ジャック・オッフェンバックの音楽や、南シベリアトゥバ共和国に伝わる喉唄ホーメイを、生演奏で随処に活用、異質な世界を聴覚に訴えかけ、うずめ劇場の本領である、時空間にこだわりコンセプトを張り巡らせたイベントになります。

 

 

【作品内容・あらすじ】

◆「昔の関係 あるいは知られたくない過去」 

家柄の良さを誇る妻、もとは下男の身だったことを妻にだけは知られたくない成金の夫、もとは妻のメイドだったが舞台の世界の華やかさにひかれて女優になった挙句、その世界に失望して再び女中をしたいと願う女、その女の女優時代の恋人で、実は夫の元雇い主だったが下男に身を持ち崩した男。このややこしい四人が、それぞれの思惑とそれぞれの”昔の関係”を胸に秘め、誤解と勘違いを積み重ねていくドタバタ喜劇。うんざりするほど生々しく薄汚い人間関係の行き違い、しかしどこか四人とも生き生きして映る、”人間らしさ”を喚起する傑作。

◆「酋長”夜風” あるいは世にもおぞましき宴」 

太平洋の片隅に浮かぶ二つの島。一方は未開、一方は文明社会に与している。二つの島に暮らすそれぞれの部族は、互いに微妙な距離感での交流を保っている。両者に共通の習慣が、人間の肉を食べること。それぞれの酋長は共に寡夫である。なぜ妻が死んだのかはわからない。実は、どちらも気づかれぬうちに、相手の妻を食ってしまったのだが。酋長”夜風”の娘が、浜辺に漂着した白人男性と恋におち、他人に食われるのを恐れてかくまう。もう一方の島の酋長は、ヨーロッパに遊学していた息子が帰るのを待っていたが、船の到着が遅いのを心配している。両島友好の席の食卓に、新しい肉が上がり、それを食べた父親は急に気分が悪くなる。果たして真相は? 生きるために他者を必要としながら、他者の存在に無関心な現代社会を痛烈に皮肉った異色作。

 

【作家プロフィール】

ヨハン・オポーネク・ネストロイ ( Johann Nepomuk Nestroy, 1801年~62年)

オーストリアの劇作家。ウィーン生れ。最初はオペラ歌手を志したが,その喜劇的才能の方を買われて,40年近くもウィーンで最も愛された喜劇俳優となった。自分が演ずるための作品は早くから書いていたが,1833年に初演された《悪霊ルンパチバガブンドゥス》で最初の成功を収めた。この作品はシュトラニツキーに始まるウィーン民衆喜劇の伝統に立ちながら,先輩格のライムントとは違って,人間界の外側の妖精界を詩的には描かず,むしろパロディ化している。